大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋高等裁判所 昭和24年(控)1201号 判決 1950年6月12日

被告人

三協和紡株式会社

右代表 市川義忠

外一名

主文

原判決を破棄する。

被告人三協和株式会社を罰金五万円に被告人脇田稻二を罰金一万円に各処する。

被告人脇田稻二において右罰金を完納することができないときは金百円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。

但し被告人三協和紡株式会社及び同脇田稻二に対し本裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

原審における訴訟費用は被告人等の負担とする。

理由

弁護人奥村仁三提出の控訴趣意第二点について。

右に説示したように原審が被告人脇田稻二の行為によつて被告会社を有罪とするに当りその直接の刑罰規定を掲示しているがその適用の根拠たる臨時物資需給調整法第六条の適用を遺脱していることは正に論旨の通りである。然るところ該規定はそれ自体明かなように直接に刑罰乃至刑の範囲の加重軽減に関する規定でなくその形式並びに機能において所謂総則的規定といい得るがこれを一般の所謂総則的規定と同視することは許されない。蓋し該規定は現行刑罰法令における自己責任の原則に対し一大例外たる連坐の規定でありこの規定を俟つて始めてその行為者にあらざるものに対し刑事上の責任を追究し得るのであり夫の一般の自己責任の原則の上に立つ総則的規定のように特にその掲示をなす迄もなくその適用がおのずから明かなるものとは全くその趣を異にしその適用は飽く迄判文上明白なることを要するものとせねばならない。従つて判文上該規定の掲記をなさずして非行為者たる被告会社を有罪とした原判決は刑事訴訟法第三百八十条に所謂法令の適用を誤つた違法があり且つその違法は判決に影響を及ぼすこと明かであるからこの点の論旨は理由あり同法第三百九十七条によつて原判決中被告会社に関する部分は到底破棄を免れない。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例